横浜の家

古くからこの地に住む夫婦が、敷地を含む周辺の造成を機に2人の住まいを建替えたプロジェクト。建設地は日当たりと眺望の素晴らしい立地であると同時に、丘陵地にあるため風が非常に強く吹く土地です。従前の住まいに比べ隣地との距離が近くなることをどのような形で受け止め、新しい生活を心地よく過ごしていただけるかに、私たちは心を砕きました。

窓からの景色

従前の家では、窓から見える景色は、自らの庭の木々や遠くの丘の風景でした。新しい住まいでも、窓から庭や遠くの丘の風景を楽しめることを第一に考えました。
1階は中庭を囲むコの字の平面形とすることで、隣接建物からの視線と西日を遮るかたちとしました。中庭に向いた大開口の木製引き込みサッシを設え、遠くの丘まで臨める形としました。
造園は中庭のモミジを中心に、雑木類を織り交ぜて計画し、四季の変化を楽しめる庭づくりを進めました。また、崖地を吹き上げる風の対策として随所に常緑の高木を配置しています。

寄棟の屋根

丘の上に建つ家のシルエットが稜線に馴染むよう寄棟の屋根で計画をしています。寄棟により建物の高さを抑えつつ、庇を出すことで冷房期の日射熱取得率の軽減も図っています。また、オーナーご夫婦がお持ちのアート作品や雑貨が鮮やかに空間を演出していくことが予め想定されているため、建物内装はシンプルで彩度が低いカラースキームとしています。アートを掲出するためのニッチや床の間などは、解体された従前の母屋の古材を再利用しています。

安全で快適な家づくり

耐震等級2(基準法の1.25倍)相当で設計し、長期優良住宅同程度の耐震性能となっています。廊下・階段やトイレの幅は一般的な木造住宅よりゆとりを持った寸法を確保し、長く住み続けられるよう工夫しています。また、高気密・高断熱と全館空調により、年間通じて気温の変化が少なく、室内温度のばらつきが少ない快適性の高い住まいとなっています。この全館空調(コンフォート24)は、HEMS(*)で各部屋の温湿度を測定しつつ、家庭用エアコン2台で、外気を混ぜながら1階は床下からの空調、2階は天井からの空調としています。日常的な動線は1階で完結しており、2階階段室入口に空調区画を兼ねた引戸を設置、空調を1階と2階で分けた系統としています。

(*)Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略

【紹介動画を作成しました】
https://youtu.be/zSvMYfk26G8


横浜の家 建物概要

竣工:2021年
所在地:神奈川県横浜市
主要用途:専用住宅
構造・階数:木造・地上2階
敷地面積:408.27㎡
建築面積:131.96㎡
延床面積:175.00㎡
地域地区:第一種低層住居専用地域、第1種高度地区
設計監理:株式会社アワーデザイン
構造設計:ASD
設備設計:MOCHIDA建築設備設計事務所 (機械設備)、有限会社EOS plus (電気設備)
造園:株式会社中央園芸
施工:矢島建設株式会社
全館空調設備:株式会社システック環境研究所

写真:永江 一弘(Ewix Inc.)

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